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ダンス写真界の巨匠・柳沢雅彦が贈る「美少女の肖像」
井上穂奈美の撮影日記 その1
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この写真集は撮影日数こそ10日足らずですが、いちおう1年間にわたって撮り続けたものなんです。柳沢さんは売れっ子の写真家なので忙しいし、私も学校があるので、なかなかお互いの都合がつかず、大変でした。撮影のクランク・インは昨年の夏休みのことでした。あの郡上踊りで有名な岐阜県郡上郡で撮影を開始したのです。でも、その撮影には、お母さんばかりか妹まで一緒についていって大騒ぎでした。
美しいステンドグラスが飾られていた白鳥町のカフェテラス「風見鶏」では、私の撮影のために特別に作られたフルーツパフェまで、もう1つ余分に作ってもらって、ちゃっかり妹も御馳走になっていました。私は生まれて初めての本格的な撮影で、かなり緊張しているのに、妹は、ちゃっかり家族旅行気分です。それでいて、いつも私の撮影現場を興味深そうにのぞきこんでいます。そうこうするうちに柳沢さんも妹に声をかけました。「キミも女優志望なの。カメラ目線が、なかなか決まってるね」妹は、じっと柳沢さんのこと(もっと正確にはカメラ)を見つめるんです。しかもシャッターを押すまで徹底して瞬きしないから、相手のほうが根負けしちゃうんです。でも柳沢さんは「今は前歯がないから撮れないけど、今度、生えそろったら撮ってあげるからね」と優しく、なだめていました。
私はヘア&メイクやスタイリストの人とも、すぐに仲良しになっちゃいました。なにせ私ひとりの撮影なので、いつのまにか和やかな雰囲気に包まれるんです。ちょっとばかり我がまま言ったって、なんとかなっちゃう。柳沢さんも写真がうまいから、さほど文句も言わず(ちょっとは迷惑そうな顔もするけれど)「いいよ、ボクは天才だから、必ず、いい写真撮りますから…」といった調子でした。ヘア&メイクやスタイリストの人に、せっかく用意してもらったアクセサリーや衣装についても、あれいやだ、これいやだ、とか言って困らせました(ゴメンなさい)。
隣りの大和町では「古今伝授の里・フィールド・ミュージアム」で撮影しました。驚いたのは私ひとりのために、とてつもなく広い空間が確保されていたことです。なにせ私の更衣室と撮影現場とは大声で叫んでも声が届かないほどの遠い距離。まるで、お城の天守閣にいる、お姫様になったような気分(笑)でした。
ところが、いざ撮影が始まると困ったことが起きました。なにせ長良川の最上流部の山奥なので携帯電話がつながらず、カメラをセッティングして現場で待機する柳沢さんと私についているヘア&メイクやスタイリストの人との間で細かい打ち合わせがスムーズにできないのです。柳沢さんは、とってもシャイな人で、私の着替え現場には立ち会いたくないというし、結局、衣替えのたびにアシスタントが走り回って、汗だくで連絡をとっていました。たとえ映画の主役でも、こんな贅沢な悩みはないんじゃないかな。
でも空気や水は最高に美味しかった。もちろん自然が豊かなぶんだけ、蚊も多くて大変…。私の身体には蚊を撃退するための秘密兵器(アメリカ製)が取り付けられました。おかげさまで私は何の心配もなく撮影に集中できましたが、みんな私を守ることに必死で、ひと通り撮影が終わるころには、スタッフは全員フラフラ。予想以上に体力を使いはたしてしまい、夕食でお腹がいっぱいになると、疲れがドッと出てダウン寸前。お風呂に入るのもやっとだったみたい。
あとで聞いた話ですが、あの晩、元気だったのは私ひとりだけ。夜の郡上踊りも楽しみにしていたのに、付き添い人が見つからず、とうとう行けずじまい。私、盆踊りが大好きなのに、残念だったなー。しいて言えば、それだけが心残りかな。でも、まあ、いいか。将来の楽しみが1つ増えたと思えば…。スタッフの皆さん、本当にお疲れさまでした。あっそうそう。次回は9月7日(木曜日)です。お忘れなく。
井上穂奈美
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